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No.60 妊娠中および乳幼児期の糖分の取りすぎは子供の喘息を起こりやすくする

  • 執筆者の写真: 木田 厚瑞 医師
    木田 厚瑞 医師
  • 2020年5月14日
  • 読了時間: 3分

更新日:2023年3月20日


2020年5月14日

 小児喘息は、近年になってほとんどの国で増加しています。恐らく、近代的な生活習慣が喘息を起こしやすくしていると思われますがその詳細は不明です。

肥満は、先進国の中では大きな医学上の問題です。糖尿病を始め、心血管病変の合併症が多くなり、そのための医療費が膨大な額になり医療経済の上からも解決が求められています。

肥満があると喘息を起こしやすく、また、喘息のコントロールが難しくなることが知られています。

そこで、肥満を起こす原因として糖分の摂り過ぎがあり、その結果、喘息も起こりやすくなっているのではないか、と考えられています。

ここで紹介する論文[1]は、妊婦の食習慣が胎児にどのような影響を与え、さらにその環境で生まれた子供が喘息になりやすくなることを疫学的に証明したものです。



Q. 糖分の取りすぎが喘息を起こすか?


 1980年以降、米国では小児の喘息患者が増加している。その理由の一つとして、妊娠中の母親が糖分の取りすぎがあるのではないか、あるいは乳幼児期に果糖を含むジュース類を飲ませ過ぎが原因となっているのではないか、という疑問が挙げられた。

・2003-2006年に米国で実施された国民健康、栄養調査では、2-9歳の喘息、および成人のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が増加していた。考えられる機序は、過剰の果糖を摂取することにより腸内の細菌叢が変化した結果ではないか。


・縦断的な親子研究では、幼児期の糖摂取量とは無関係に、妊娠中の母体の遊離糖摂取量は子供が7〜9歳に達した時点での、アトピーとアトピー性喘息のリスクの高さと関係していた。



Q. 本研究の方法?


 これまでの研究は、横断調査(ある年度の該当者を調べて果糖の摂取と喘息発症が統計学的に有意な関係があるかどうか)であるが、本研究は、妊娠中の母親の果糖摂取量を調べ、さらに出生した乳児の3.3歳での果糖の摂取量を調べ、7.7歳で喘息があるかどうかを調べて喘息の発症に関わる生活上の因子を調べた縦断調査である。

米国在住の1,068組の母親と、その子供のペアをつくり、砂糖入り飲料とフルクトースの摂取量を調べ、その他、教育レベルや生活習慣などについて調査し、多変量解析を実施した。




Q. 研究結果?


以下の項目が喘息を発症しやすくする。


・妊娠中に砂糖入り飲料の摂取量が多い(平均0.6サービング/日以上)。


・母親の年齢、人種差、教育程度、平均収入、妊娠中の肥満度を一致させて比較すると、妊娠中の摂取量の増加(オッズ比1.70; 95%信頼区間1.08–2.67)、フルクトース摂取量の増加(オッズ比1.58; 95%の信頼区間、0.98〜2.53)と小児期の喘息発症のオッズが高くなることに関係(有病率、19%)。


・生後では幼児期の果糖摂取量は、母体の砂糖入り飲料(オッズ比1.79、95%信頼区間1.07–2)を調整して比較しても7.7歳の時点の喘息と関連していた。スコア(オッズ⽐、1.77、95%信頼区間、1.06〜2.95)


 本論文の特徴は、1)妊娠初期、中期における母親の食生活のうち、果糖の摂取量が生後の子供が7歳余りに達した時点での喘息発症と関係することを明らかにした、2)生後では子供が乳幼児期に果糖を多く摂取し、肥満となると喘息を発症しやすくする、ことをあきらかにしています。加えて、調査症例数が多いこと(1,068組)が特徴です。ただし、米国で暮らす若い世代の食生活を反映していることに注意する必要があります。



 妊娠中の母親が喫煙者のとき、その母親と同居する子供は喘息を起こしやすいことは古くから知られています。乳幼児期は母親と過ごす時間が長くなるのでその影響を子供が受けやすい結果であると推定されています。

COPD(慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)は、中高年に多い病気ですが、幼児期の喘息と深く関係することが明らかになってきています。本研究では、妊娠中の母親の不健康な食生活がその後、小児期、さらに成人になってからも大きな影響を与える可能性があると警告しています。



参考文献:

1.Wright LS. et al. Prenatal and early life fructose, fructose-containing beverages, and midchildhood asthma. Ann Am Thocic Soc 2018; 15: 217-224


※無断転載禁止


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