• 木田 厚瑞 医師

No.69 家族性間質性肺炎の新たな展開


2020年6月4日

間質性肺炎は、肺のもっとも大切な機能である酸素の取り込みと二酸化炭素の排出を行う肺胞が広い範囲で炎症を起こし、その結果、線維化が進み、強い息切れが治まらず高度の酸素不足となり、長い間、患者さんを苦しめる病気です。多くの呼吸器疾患の中でも治療が難しい病気の一つですが近年、線維化を抑え込むような抗線維化薬が開発され、治療に光が見えてきました。

間質性肺炎の中には親子や兄弟で同じ病気の人が見られることがしばしばあります。ここで紹介する論文は、間質性肺炎が一親等以内の家族で多いことを証明した論文であり、抗線維化薬が効果を挙げる初期病変の発見には貴重なデータです。



Q.どのような研究か?


・ハーバード大学付属病院で間質性肺炎と診断された105人で、1親等以内の親族に協力してもらい肺機能検査、胸部CT撮影、血液検査に加え、染色体の末端のテロメア長、遺伝子検索を行った。

・親族の33人(31%)に胸部CT撮影で間質病変が見られた。そのうち19人は胸部CT,肺機能検査で間質性肺炎と診断された。

・家族性間質性肺炎と診断された46人と偶発的に生じた散発性の間質性肺炎の59人の間では胸部CTおよび肺機能異常、遺伝子異常の程度に差異はなかった。



Q.結論は何か?


・間質性肺炎の1親等以内の家族の1/6には初期の間質性肺炎があり、しかも未診断となっていた。

・このような初期の間質性肺炎では肺機能のうち肺活量、肺拡散能の低下を起こすオッズ比は9.6倍に達した。

・発症には遺伝的背景がありそうである。



Q.どのようにして早期病変を見つけるか?


・親族に間質性肺炎がいないか、という情報に加え喫煙歴がある高齢男性、精密な肺機能検査、胸部CT(特に高感度CT)が有力であり、将来的にはリンパ球のテロメア長や遺伝子MUB5Bの異常の有無の検査を組み合わせることにより早期病変を発見できる可能性がある。

これまでも間質性肺炎には家族発症が知られ注目されていました(0.5-20%)。この研究では、これまで原因不明とされていた間質性肺炎(散発性の間質性肺炎)と家族性間質性肺炎は、重なる部分が多いことを証明しました。早期病変を見つけるという点ではこの論文が指摘した事実は重要です。早期病変は比較的若い人に多く、抗線維化薬による治療が可能となることが多いことが考えられるからです。


この論文の末尾には間質性肺炎で亡くなった二人の患者さんの家族が研究の推進を願って多額の研究費を寄付したことが謝辞として述べられています。

著者のHunninghakeは有名な臨床医で研究者ですが、患者さん、家族と臨床医が連携した熱意が伝わってきて勇気づけられます。


参考文献:

1. Hunninghake, GM. et al. Interstitial lung disease in relatives of patients with pulmonary fibrosis

Am J Respir Crit Care Med 2020;201: 1240–1248. (May 15, 2020)


※無断転載禁止


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