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No.43 急性気管支炎とはどのような病気か


2020年3月12日


 カゼと急性気管支炎はどう違うのか、急性気管支炎と肺炎はどのようにちがうのか。

新型コロナウィルス肺炎で、医学用語が飛び交っていますがここでは急性気管支炎について解説します。カゼはNo.35, 肺炎についてはNo.42をご覧ください。




Q. 急性気管支炎の特徴?


 急に咳で発症することが多く、痰は出ることも出ないこともある。次々と感染が広がることはなく(self-limited)、1-3週間の経過で治る。




Q. 医師が行う治療の方針?


 対症的な治療を基本とする。同時に患者さんに生活の上で注意することを伝える。抗生物質は不要である。




Q. 定義は何か?


 比較的太い気道(気管支)から細くなっていく気管支の炎症であり、肺炎を起こしていないこと。ただし、COPD(慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)がある場合には急性気管支炎とは呼ばない。




Q. 頻度はどのくらいか?


 米国では全外来患者数の10%で年間のべ1億人がかかる。




Q. 急性気管支炎の病原体はなにか?


 研究として知られているのは次の6種のウィルスである。日常の臨床ではインフルエンザ以外では百日咳、マイコプラズマ感染の可能性を疑い検査を行うことがある。


インフルエンザ、A型、B型

パラインフルエンザ

コロナウィルス 1型、2型、3型 ➡新型コロナウィルスとは異なる

ライノウィルス

RS ウィルス

ヒトメタニュモウィルス

その他として、百日咳菌があり、細菌ではないがマイコプラズマ、クラミジアがある。




Q. 急性気管支炎の臨床経過?


・全経過は1-3週間。咳に加えて痰を伴うことがある。痰は膿性や非膿性(透明あるいは白色)のことがある。


・多くはカゼが先行して、やがて急性気管支炎となる。頭痛、鼻閉、咽頭痛、はカゼ症状と重複する。気道の炎症が下気道に広がるにつれて咳がでるようになる。


・咳と共に軽度の息切れを伴うことがある。また、咳とともに筋肉痛を伴うことがある。




Q. どのように診断するか?


・急性発症であり、咳の持続期間は1-3週間内であり、肺炎には至っていないこと。肺炎を疑う場合は、発熱、頻脈、胸部の聴診で雑音が聴かれる場合。


・肺炎を疑う場合は以下のどれかに当てはまる場合

   脈拍数が1分間に100以上

   呼吸数が1分間に24回以上

   体温が38℃以上

   酸素飽和度が95% 以下




Q. 治療はどうするか?


 鎮痛剤、解熱剤の対症療法を原則とする。抗生物質は服薬しなくとも良い。




Q. 注意点は何か?


 基礎疾患としてCOPDあるいはCOPDに極めて近い場合には抗生物質、ステロイド薬の投薬を考える。したがってCOPDやこれに近い肺の病変がすでにあるかどうかの判断が重要である。




Q. 予防法は何か?


・手洗いが重要。

・咳が出る場合にはマスクをする。

・温かい水蒸気の吸入は症状を和らげる。




参考文献:

1.File TM, Jr. et al. Acute bronchitis, UpToDate, This topic last updated: Nov 21, 2019.


※無断転載禁止


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