No.350 重度の息切れを緩和する治療法
2026年3月17日 じっとしている時にも強い呼吸困難があり、治療を必要とする方がいます。重症のCOPD、重い間質性肺疾患、心不全、終末期のがんがその典型です。健康な人では、急な坂道や、重い荷物を持ったときに息切れを訴えることは普通にみられますが、安静な日常の生活の中で、肩で息をしている人を診ると、こちらも苦しくなるような深い同情を覚えます。 「息切れ」は、日本語では、日常の会話でも使われ、古くから知られる言葉です。英語圏でもshortness of breathと表現され、「あえぐこと、能率の低下、気力の消失」とあり、「精神的に」、「経済的に」と多様な表現があります(新和英大辞典、研究社)。身体的な苦しさ、が社会と深く関係することを示していると言えます。 個人的な訴えである 息切れ をどのように客観的な共通用語で表現、評価していくかの新しいアプローチは、診断の精度を向上させる研究として進んできています。しかし、息切れは個人的な訴えであり、臨床現場では依然として過小診断されています。聞いてもらえない、分かってもらえない、という声は少なくあ
3月17日


No.349 難しいCOPD、喘息の区別―MRIによる新しい検査方法―
2026年3月12日 X線の発見は、ドイツの物理学者、ヴィルヘルム・レントゲン(1845 – 1923年)が1895年に報告し、この功績により、1901年、第1回ノーベル物理学賞を受賞しました。X線という呼び名も彼が命名したと、言われます。現在、使われているようなX線による胸部写真が利用できなかったら呼吸器疾患だけでなく医療における診断や治療の現在は、ほぼなかった、といえる貢献度です。 X線に加えて 磁気共鳴画像法(MRI)は、近年の医療の中では、大切な検査方法の一つとなっています。歴史的には、1970年代初頭、ポール・ラウターバーとレイモンド・ダマディアンが核磁気共鳴(NMR)技術を生物のイメージングに応用し、画像を生成することに成功しました。その後、サー・ピーター・マンスフィールドらによって開発された画像取得、処理の改良により、詳細な解剖学的な可視化が向上し、MRIの臨床応用がより広く可能になりました。ラウターバーとマンスフィールドは、医療画像への貢献により2003年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。 肺の病変は、CT検査と
3月12日
No.348 睡眠障害、多忙、高血圧、心血管病変―危険な連鎖
2026年3月4日 不眠症は、病気の種類に関係なく、診療の現場では多い症状の一つです。有病率の推定値は、不眠症の定義によって異なりますが外来患者を対象とした横断調査では、成人の3分の1から3分の2が重度の不眠症状を訴えている、という報告があります。多忙な中年世代に共通する症状といえます。 中年だけでなく、不眠症は高齢者に多く見られ、その有病率の高さが指摘されています。また、女性は思春期に不眠症が始まり、妊娠および閉経前後・閉経後に悪化する確率が1.2倍から1.4倍高いと言われます。 呼吸器疾患は、不眠症と関わりが深いことが知られています。 呼吸器疾患をもつ患者の25~50%が不眠 を報告しています。さらに、COPD、喘息の症状や急性悪化の頻度は不眠症の重症度と関連しています。喘息の患者では、夜間に気道内の分泌物が蓄積し、夜間の気管支収縮などの症状があり、不眠の原因となることがあります。高齢女性に不眠が多いこと、喘息は夜間や早朝の時間帯に悪化が多いこと、高齢女性では独居が多いこと、などの事情があり、診療では夜間の状態を特に注意して聴くこと
3月4日
No.347 長引く咳で困っているとき
2026年3月2日 長引く咳で困っている人は少なくありません。特に、花粉症シーズンが近づき、多くなってきた印象があります。 長引く咳の原因は多く、治療が難しい場合がありますが中には薬の副作用で咳がでることがあります。注目されるのは、最近、発表された糖尿病の治療薬として使われているグルカゴン様ペプチド1受容体作動薬が慢性咳に関連があるのではないか、という指摘です(UptoDate, 2026年2月26日報告)。現在、グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬は、糖尿病だけではなく 美容を目的とした痩せ薬 として使われることがあります。痩せ薬としてグルカゴン様ペプチド1受容体作動薬を用いている人では、保険診療外の取り扱いとなるので医療管理が甘くなっている可能性があります。以下が、その概要です。 「グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP1-RA)の使用頻度が増加するにつれて、臨床的に関連性のある副作用は頻度として(使用者の母数が多くなるので副作用比率として)少なくなると考えられてきた。少数の副作用例があっても、使用者数が増加すれば比率としては減
3月2日
No.346 社会的な背景が大きいCOPD ―コロンビア、英国にみる苦悩と対策―
2026年2月25日 COPDの発症は、遺伝的な負荷要因も指摘されていますが多くの未解決な社会的背景を特徴としています。これは喘息とは異なる点の一つです。 COPDの主な原因は喫煙と大気汚染と言われてきましたが、喫煙率が低下し、公害と騒がれた時代の大気汚染はわが国では今では改善してきました。わが国の統計ではCOPDは次第に患者数が減りつつあると言われています。しかし、私たちのような診療現場では、COPDは次第に減少している病気とはとても言えない状況です。重症者は減少していますが軽症者は決して減少していないようです。 途上国を含めた多くの国では、環境要因と社会的な啓発活動、未解決な政治的問題など多数の対策が不十分なまま、COPD患者数は増え続けています。 「WHO 世界電子タバコ使用状況推計」では、世界中で 1 億人以上が電子タバコを利用し、成人では少なくとも 8,600万人の使用者がいる。その大半は高所得国に居住している、といわれます。少なくとも1,500万人の子ども (13~15歳) が既に電子タバコを使用。...
2月25日
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