No.329 COPDという病気の問題点
2025年10月24日 COPD 、邦名では、 慢性閉塞性肺疾患 という難しい呼び名は、すでに千年以上の歴史をもつ喘息という病名に比べれば新参者のイメージがあります。この病名に至るまでは、慢性気管支炎、肺気腫という病名が使われていました。 最近までCOPDは喫煙歴のある中高年男性の病気というのが医療者だけでなく一般の人たちの考え方でした。2000年、たばこ規制枠組条約の発効に先駆けて、世界で最初に画像入りのたばこ警告表示を採用したのはカナダでした。これは、カナダの呼吸器疾患の研究グループが1960年代より、世界でもっともタバコ関連の呼吸器疾患の研究をリードしていたことが背景にあります。その後、わが国もたばこ規制枠組条約に加盟し「たばこ事業法」「たばこ事業法施行規則」さらに「健康増進法」に至る法律が整備され喫煙者本人だけでなく受動喫煙の配慮義務が規定され、現在に至っています。 厚生労働省の統計によると2023年のCOPDによる死亡者数は16,941人、死亡率は14.0%でした。近年、少しずつ、増加傾向となっています。COPDは20年以上の喫煙
10月24日


No.328 長引く咳に隠れる間質性肺炎に注意
2025年10月22日 報道されることもなく過ぎてしまいましたが、9⽉25⽇は、「世界肺の⽇」に指定されています。都市化、近代化が進み、私たちが呼吸する生活空間は変わりました。交通や産業による⼤気汚染、現代的な家庭での室内汚染物質、喫煙、⾝体活動の減少、など胎児の時代から幼少期、青年期を経て老年期に至る⽣涯にわたる危険因⼦が私たちの周囲を取り巻いています。 肺を守ることは、なによりも「予防が鍵」です。さらに新しく問題となってきたのは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が残した社会的後遺症です。パンデミックが治まった後の最近では日常生活が感染前の状態に戻っていないと言われます。家吞みが多くなり、集会のような行事は少なくなり、医学の学会ですら、ウェブ利用が多くなり、情報を伝達する方法は明らかに変化してきました。 肺はインフルエンザやCOVID-19の主なターゲット臓器であり、社会的な変化をもたらしただけでなく、呼吸器疾患にも多くの刻印を残しています。その一つがCOVID-19後の患者さんに軽度で、従来とは異なる間質性肺炎を診る機会が多く
10月22日
No.327 併存症が多い喘息治療はなぜ難しいか
2025年10月20日 糖尿病や高血圧など 併存症が多い喘息は治療が難しい と言われています。しかし、中高年の喘息患者さんのほとんどで併存症があります。治療を難しくしている理由は、喘息は、重症ではないが併存している他の病気が喘息の治療方針を難しくさせるためです。他方で、これまでは、治療が難航していた喘息の一部で有効性が判明している⽣物学的製剤が新しい治療薬として大きな改善効果を示しています。しかし、薬は極めて高価であり、また、患者さんが正確に無駄なく進めるには、いつまで治療をどのような形で継続すればよいのか、という問題点もあります。 ⽣物学的製剤の治療という新しい治療が、スタートしたことを背景に、重症喘息を見直そうとする論文は、呼吸器医にとっても関心の高い領域であり、近年、発表論文は極めて多くみられます。治療が難しい重症の喘息をどのように治療を進めていくか。 日本喘息学会が2023年に発表した「喘息診療実践ガイドライン2023」では、重症化因子として合併症・併存症が挙げられています。それらは、肥満、睡眠時無呼吸症、鼻炎、ストレス、胃食道逆流症
10月20日


No.326 悪性腫瘍の診断名をどのようにして本人に説明するか?
2025年9月29日 カゼのような症状で受診された患者さんが、たまたまの検査で、すでに広がっている肺がんと判明したとき、本人にどのように説明すればよいか? 1990年代では、本人には深刻な病気であることは伏せ、家族の中で患者さんがもっとも信頼を置いている人―キーパーソンに...
9月29日


No.325 超高齢者の健康をどう守るか – 先端医療が抱える問題点の解決
2025年9月16日 9月15日は敬老の日です。全国で100歳以上の高齢者数は、2025年9月1日時点で約10万人であり、前年比では約4,600人の増加と報告されています。男女別では、女性が全体の88%を占めており、圧倒的に女性優位です。厚労省では平均寿命だけでなく、生...
9月16日
.png)
