No.366 生まれつき肺のサイズが小さめの人
2026年8月15日 「小顔ですっきり見える」というキャッチコピーを目にして、小顔が美人の代名詞なのか、と妙に納得した覚えがあります。肺はどうか。体格に比して肺のサイズが小さい、「小さな肺の人」という論文を読んで考えさせられました [1]。著者のPeter Burneyは、英国のNational Heart Lung Institute, Imperial College Londonに所属する呼吸器病学の研究者ですが、一貫して「小肺症候群」という病変の重要さを主張しています。肺の病気についてはCOPDがその代表であるように膨らみ過ぎ(過膨張肺)と逆に病気により元のサイズより小さくなる間質性肺炎・肺線維症が問題とされてきました。これに対し、Burneyは、肺のサイズが生まれつき小さめであることを問題としています。例として、肺移植を行う際、体格を基準に適合を選んでいるのに時に合致しない、などがあると指摘しています。さらに、「小さな肺の人」は、寿命の長さに関係するという主張は、注目すべき提言です。その理由として、肺と心臓が不調和となる小肺症候群では
8月15日
No.365 負の連鎖:高齢化―大気汚染―認知症
2026年8月3日 わが国では、大気汚染による公害が問題となり、その環境の中で生活する人たちには慢性呼吸器疾患が多く、かつ悪化しやすいことが知られてきました。大気汚染は、小児の呼吸器感染症の増加、成人のCOPDや喘息の悪化を起こすだけでなく近年、認知症の主要な危険因子として注目されています。ちなみに認知症とは、1つまたは複数の認知領域(学習および記憶、言語、実行機能、複雑性注意、知覚運動、社会的認知)における認知機能の低下を特徴とする後天性の疾患です。 微小粒子状物質(PM2.5)の長期曝露と認知機能低下や認知症発症率の増加との関連性を示す証拠が増えつつあります。人口の高齢化と大気汚染が同時に進んでいる中国では特に重要な社会問題となっています。 これまでの研究のほとんどは、PM2.5による健康への負担を時間経過とともにどのように進むかのプロセスで、曝露反応との関係を確立することに焦点が当てられてきました。幼少時の暴露が呼吸器系に与える影響は深く研究されてきましたが、この研究過程で新たな健康問題として浮かび上がってきたのが認知症との関係です。
8月3日
No.364 期待される傷ついた肺胞を再生させる新治療
2026年7月20日 肺は、酸素を取り込み、二酸化炭素を体外に排出するという生命を維持するための 大切な役割を担っています。その機能の中で「肺胞」という小さな構造単位こそがその中心です。 急性の呼吸器疾患には多くの種類がありますが、治療が難しい急性呼吸窮迫症候群(ARDS)があり、慢性の呼吸器疾患の中ではCOPD、特発性肺線維症(IPF)があります。これらの疾患は、発症や経過は異なっていますが共通している点は、肺胞が広い範囲にわたり構造変化、すなわち構造破壊が起こることです。その結果、重症化すれば生体の維持に必要な酸素のとりこみが行われなくなります。元の肺胞構造をうまく回復させることが、共通した治療の最終目標です。これにたいし発症の頻度が高い気管支肺炎も肺胞構造に広範囲な炎症を起こす疾患ですが、炎症反応に対して抗生物質の治療が奏功すれば、多少の問題点は残すにしろ、元の肺胞構造に戻せる、すなわち構造破壊が起こりにくい点が先の疾患群とは異なる点です。 薄い膜状の肺胞の構造の主役は、空気に接する面に位置する肺胞上皮細胞です。肺胞上皮細胞には2種類
7月20日
No.363 呼吸リハビリテーションの問題点と在り方
2026年7月9日 慢性の病気の多くは、治癒、すなわち完治というより病気を持ちながらも快適な生活を最大限、工夫していくことが大切だ、と考えられています。その最大限の工夫の一つがリハビリテーション(リハビリ)です。階段や登り坂での息切れなど日常生活の上で苦しさ、不自由さを起こす呼吸器疾患の治療では、特にリハビリテーションという治療法を持ち込むことが大切です。多くの疾患の治療で、リハビリが大切なことは、内科学の祖と言われるウィリアム・オスラー (1849-1919年)が100年以上前に指摘していますが、いまに至っても十分とは言えないほど多くの問題点を抱えています。実際、多くの患者さんに対し、限られたスタッフ数の診療現場で継続的なリハビリの実現は容易ではありません。 一般のメデイアは取り上げていませんが、医療記事では、世界保健機関(WHO)事務局長が改めてリハビリの大切さを提言しています[1]。以下が概略です。 「第158回執行理事会において、リハビリテーションの保健システムへの統合を監視するための世界的な指標を概説した報告書を発表した。これらの
7月9日


No.362 痩せ型と肥満型COPD:体型で異なる問題点
COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は邦訳では慢性閉塞性肺疾患。肺気腫と慢性気管支炎の病名を一つに表現した簡略病名であり、英語読みの頭文字を取って略語とした正式病名です。すでに半世紀以上が経過していますが同じような慢性疾患として定着している糖尿病と比較すると分かりにくい病名といえそうです。その糖尿病も、尿の中に糖が出てくる病気であると、単純化できないくらい精緻な病態が明らかになってきており、適切な病名のあり方が議論されていると言われます。双方ともいまや、人口に膾炙する便利な病名ですが、科学情報の進歩に合わせた変更、修正作業は容易ではないようです。さらに単純化された病名と検査により次第に明らかにされてきた複雑な病態の乖離は、病気自体を患者さんに分かり易く説明するのは、難しく、診療時間がかかるのは避けられません。 COPDは、体型から2つに分けられることが古くから知られています。痩せ型が肺気腫型であり、太った人では慢性気管支炎型が多いと言われます。両者を鑑別するには階段歩行時のうしろ姿の観察が分
7月7日
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